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インドの旅10

 この84の沐浴場には朝早くから多くの人がいる。ボートに乗ってこちらからその沐浴場をうかがう。当のインド人たちは興味深げな視線は投げかけるが、不思議そうには見ない。

 子どもたちはプールのようにジャンプをして飛び込んだり、追いかけっこをしたりして楽しんでいる。

 いっしょにボートに乗った小学3年生くらいの男の子から小さな花を買った。ガンガーに流せるように四角の紙底があるやつだ。1ドル紙幣で払った。まもなくお土産を売るボートが近づいてくる。いろんな物を売りたいようだ。ガンガーの水を入れる容器を3つ買った。90ルピー。この水を日本に持って帰るつもりだ。

 太陽はもうすぐ上がり始める。ガンガーのはるか向こう、静寂な砂州からの昇る太陽。どこか神秘さを感じさせる。この時の流れに身を任せていると平和を感じる。

 岸に到着すると一気に現実に戻される。たっぷりとお金を搾り取られた。ガイドのシュバスは第三者のように見守る。口出しはしない。シュバスは、「腹が減らないか?」と言って、知り合いのゲストハウスに連れて行ってくれた。食堂でオムレツとチャイの朝食を済ませ、寺院に向かう。日本人6人とすれ違う。「こんにちは。」と日本語で言ったが、目さえ合わそうとしなかった。そう言えば、元塾生のD.H.がこのインドのどこかにいるはずだ。どこでどうしてるんだろう。自分と同じように苦しんでるんだろうか?2週間も3週間もこのインドにいるなら、今までの自分、今までの常識なんて投げ捨てないといけないと思う。彼には今それが必要かもしれないが、そう考えると、自分はもう自分自身を捨てられずにこのインドにいるのだろう。苦しくて仕方がないから。

 シュバスはまもなくシルク工場に連れて行ってくれた。工場と言っても、裏通りの路地にひしめく家の中だが。どの家も暗くても明かりをつけずにもくもくと仕事をしている。大人ばかりでなく子どもたちも多く仕事をしている。その後、工場の一室でシルクのサリーを買った。買わされたと言う方が正しいかもしれない。シュバスは押し付けがましくないが、日本人を連れて行くルートが決まっているらしく、その場所場所でお金をもらっているんだろうということは想像できる。早めにホテルに戻してもらうことにした。そして、シュバスとも別れようと。いろんなところに連れて行ってくれたが、お金をいくら請求されるかわからない。もっとガイドをしたいという雰囲気があったが、もうこれ以上人にだまされることに耐えられなかった。このシュバスは大丈夫なはず。

 別れ際「How much?」と聞くと、手を出して首をかしげるだけ。まさか70ルピーではあるまい。「お前が決めろ。」という感じだった。30ドル渡した。30ドルは1260ルピーだ。最初に提示された額は、ガンガーまでの往復、観光を入れて70ルピーだったので、18倍も渡したことになる。十分だろう。それに対してシュバスは何も言わなかった。多いのか少ないのかわからなかった。タクシーで空港に行くなら、友達のタクシーを呼ぶと言ったが、断った。

 再び西洋化された建物の中に入り、出発までの時間をくつろぐ。ファイナルデスティネーション(最終目的地)はデリーだった。インド最大の都市。ここベナレス(ヴァラーナシー)から飛行機で向かう。そう言えば、カジがデリーの空港に着いたら、話しかけてくる男は無視しろとアドバイスをしてくれていた。その君に俺はだまされた。そんなにすぐに友情なんてできるもんじゃない。お前たち2人はそうやっていろんな町で日本人をだましているのか?許せなかった。ベナレス空港に早めに行き、軽く食事をする。クーラーのきいていない待合室でしばらく待つことにした。(つづく)

 
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