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『世界を広げるために』 中川校 校舎長 小島 龍太郎
『世界を広げるために』

 突然ですが皆さんに質問です。
あなたが駅前の繁華街を歩いていると、道端に倒れている人がいます。
さて、あなたならどのような行動を取りますか?

1.関係ない人なので、または面倒だからそのまま素通り。
2.自分でなくても誰かが何とかしてくれるだろうからその場を去る。
3.何とかしたいが何となく恥ずかしいので、何もしない。
4.倒れている人のもとへ行き、声をかける。

 このような状況に私は大学1年生のときに遭遇しました。そのとき街は学校帰りの学生や仕事終わりの会社員などでごった返す時間で、私も自宅に帰る途中でした。そしてあと100メートルほどで駅に到着するというときにその光景が目に入ってきたのです。雑踏の中、うつぶせに倒れている人がいました。そのようになっている人を見たのは生まれて初めてだったので私はとても驚きました。

 そのとき上の4つの選択肢が私の頭の中に浮かんできました。実際にそのような状況にあった人ならわかると思いますが、なかなか行動を起こすことは難しいです。それは表現するのは難しいのですが、満席の電車やバスで立っているお年寄りに席を譲るときに、自分も疲れているから譲りたくないなと思うことや、譲るにしても想像以上の勇気が必要で、なかなか言い出せないのと似ています。そのときはなぜか「善人ぶっていると周りの人に思われるかも」と思ってしまうのですよね(私だけかな?)。誰もそんなこと思いもしないのに。

 そして倒れている人を目前にしても同じような思いが私の頭をよぎってきてしまいました。ですから上の選択肢の中の「3」を選ぼうとしていたのです。また、別に見ず知らずの人でしたし、周りにはたくさん人もいるからと「1」や「2」に近い思いも正直ありました。つまり何もせずにそのまま家路につこうと考えたのです。しかしそこでちょっと冷静になって周りを見てみると、周囲の人も私と同じ思いなのかだれも声をかけようとはしません。このままもし自分が何もせずに通り過ぎてしまって、その後もみんなが自分と同じ考えをもってしまって、だれも何もしなかったとしたら…。そう思った瞬間、体が勝手に動いて「4」の選択肢を取っていました。

 倒れている人のもとに近づき戸惑いながらも声をかけてみました。反応はありません。呼吸はあるのですがとても弱く、どうしてよいかわからず、自分の手には負えないと感じた私は救急車を呼ぶことにしました。救急車が来てから救急救命士の方に付き添いが必要なので一緒に病院まで来てほしいと言われ、面倒なことになったなとやはり行動を起こしたことを少し後悔しましたが、どうしてもと言われ仕方なくついていくことにしました。

 病院に着いてから医師の処置が行われ、その人の容態も安定しました。その後で医師からもう少し遅かったら危なかったと言われたとき,行動を起こしたことへの後悔もありましたが、やはりこれでよかったのだと思いました。それと同時に自分から行動を起こすことの大切さを強く感じました。自分から行動することは人の命を助けることもあるほど大切なことなのです。

 しかし、こんな大げさなことを言われてもあまりピンとこないですよね。ただ、どんなことでも自分でやることは人のためになっていますし、また自分のためにもなっています。例えば私が救急車に乗ったときは、不謹慎ですが、救急車の中ってこんな風になっているのかということを思ったり、救急救命士の活躍ぶりを目の当たりにして感動したり、そのときだけでたくさんのことを知ることができ、進路を決めるときにその道も考えることができました。

 そのことがあってから学生時代、私は自ら行動することでたくさんのことを経験するようにしてきました。いろんなことを勉強しましたし、バンドや芝居などいろんな活動をしました。アルバイト先では他の人がめんどくさがるような仕事も積極的にやるようにしました。すべて自分から進んでやるようにしたのです。そうすることで、いままでに体験したことのない刺激的な世界に自分が入っていけました。それに、何か新しいことをするときはたいてい新しい仲間ができます。そうしてできた仲間や、その仲間とすごした楽しい時間、仲間と乗り越えたつらい経験は自分を高めてくれた大いなる財産です。「自分がやらなければ誰かやる。」と考えて自分の世界を小さくしてしまうよりも「自分がやらなければ誰がやる」と考えて自分の世界をどんどん広げていくこと。それは生きていく上で人のためにもなる大切なことであると同時に、自分の世界を素敵なものにしてくれることなのです。

 
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